2012年6月20日水曜日

苦しみの処方畿

「私は精神科医としても、神経症、うつ病、精神分裂病の治療で薬物療法を行いますが、積極的に夢を使っての心理療法(夢分析)と同時に行います。

一般に薬物(抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬)は夢に影響を与えると聞きますが、実際上、薬物療法を併用しての夢分析への治療上の悪影響というものは考えられますか」

薬物療法についての角野さんの質問ですが、私は精神科医ではないので、はっきりしたことを言う資格はありませんが、この問題は、ユング派の中でもよく取りあげられてきた問題です。

大きく分けて、できるだけ薬を使わない方法でやっている人と、患者が苦しんでいるのだから、ある程度は薬を使いながら心理療法をやっていこうという二派がありますが、私にはどちらがどうという判定はできません。自分がどうしたらいいかということは、自らの体験の中から自分自身でつかみ取っていくしかないでしょう。

薬を飲むと、ある意味では楽にはなりますが、苦しむからこそ治るというところもあって、そこのむずかしさがあります。患者が苦しむときには、治療者も苦しいわけで、医師や看護婦の苦しみを防ぐために、患者に薬を飲んでもらう場合もあります。

たとえば、放っておいたら暴れてどうしようもない患者さんなら、やはり安定剤などで抑えることも必要になるでしょう。

私が訓練を受けていた当時、ユング研究所のリックリン所長は、「自分の体のもつ限り、薬は使わない」と言っていましたが、こちらも苦しくてたまらないから使ったほうがいいという考え方の人と、両方があります。

心理療法の本来的なかたちからは使わないほうがいいというのは、理想論であって、現実の問題とはまた別です。したがって、現実問題をどう読んでいくかが大きな課題となるでしょう。

同じ使うにしても、種類とか量についてもしっかり考えていかなければなりません。私は医師ではありませんから、そういう点は、むしろ角野さんに期待したいところです。