2016年2月2日火曜日

憲草の両面性

すでに何度か触れたように、こうした「オリーブ」の側面と同時に、憲章は「牙」の部分も併せ持っている。この一般原則の例外として、二つの重要な例外を定めたのである。第一は、もう言うまでもなく、第七章による強制措置であり、違反者には加盟国が一体となって制裁に踏み切り、武力による強制行動に踏み切る、という「集団的安全保障」の考え方である。そして第二は、憲章五一条文に認めた「個別的・集団的自衛権」の例外規定である。

憲章は、戦争の概念を追放することによって、不戦条約の精神を徹底させたが、同時に、国際連盟や条約には実効力がなかったという反省に立って、強制措置発動の条項を整備した。その第一条の「目的」に、「国際の平和と安全を維持すること。

そのために、平和に対する脅威の防止および除去と、侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること」をあげ、続けて「並びに平和を破壊するに至る恐れのある国際的な紛争または事態の調整または解決を、平和的手段によって、かつ正義および国際法の原則に従って実現すること」と続けていることからも、その両面性は明らかだ。

このため、憲章は安保理に強大な権限を与え、詳細な規定を用意して、集団的安全保障としての武力行使を是認した。つまり、平和的手段による紛争処理という精神は、第六章の「紛争の平和的解決」に委ね、そのメカニズムが十分に機能しない、あるいは失敗した場合に備えて、経済制裁などの強制措置から、武力を含む強制行動へと段階的に制裁を強める方法を準備した、と見ることができる。