2015年6月2日火曜日

年金の国庫補助を廃止するプラン

スウェーデンの医療費はGDP対比で七・五パーセント(一九九三年)で、OECD(経済協力開発機構)のなかでも低いほうである(日本は七・〇パーセント)。スウェーデン政府は「これ以上ふやさない」ことをモットーにしている。ただ、この医療費は、かつて県が負担していた診療所の費用がコンミューンに振り替えられるようになっており、日本の医療費のように介護費用は含まれていないことを考えると、そんなに低いとはいえないように思う。

リフォームと呼ばれている政策のなかで、もっとも強烈なのが年金改革(いちおう九四年六月の国会を通過している)である。その方式をかいつまんでいうと、掛け金をふやし、給与の一八・五パーセントを掛け金として、その運営だけで基礎年金と付加年金(現行)をプラスした新しい年金の柱とし、一八・五パーセントの掛け金のうちハ・五パーセントはその年度の年金支払いのために使い、ニパーセントはプライベートの保険と同じように、年金の保険料として支払うか、給与として受け取るかを各個人が決めることができる。

掛け金の負担は本人と企業が五〇パーセントずっで、六五歳で年金を受け取るさい、働いていた賃金の五二パーセントの収入になる。経済成長率を一・五パーセントとして、二〇一五年までに約二〇〇億クローネの削減になるという。現在六〇歳の人から適用する。また現行のパートタイムで働いている人は年金の対象から外すことにしている。

このほか、さまざまな工夫によって、経済成長が低くなると年金額は現在より減り、また平均寿命が延びると受給額は減らす仕組みにもなっている。日本の年金改革案が、国庫負担を二分の一にしようとしているのとは雲泥の差である。もっともスウェーデン人のなかには、「国庫負担を全廃するといっていても、運営がうまくいかなくなると、国が予算を出すことに修正するのがスウェーデンですよ」という声もあるらしい。

スウェーデンの医療費のなかで傷病手当金のウェイトは大きい。それは病気になったとき(その日)に電話をするだけでサラリーの九〇パーセントが保障されるというもので、過去、かなり″悪用”されていたフシがあった。政府はこの給付を八〇パーセントに下げ、二日目から給付を開始することにした。これだけでもかなりの効果があるといわれている。いわゆるズル休みによる不当利得を排除しようというねらいといってもいい。