2015年8月3日月曜日

他官庁との競合・抗争

日ソ関係について二言しておけば、北方領土問題の解決を最重要課題とし、他の問題をすべてこれと絡めるいわゆる。政経不可分論の立場は、外務省が長年にわたって主張してきた政策である。ソ連の対外政策が硬直し、日本にとってソ連は脅威であるという主張が受け入れられやすい時代には、この主張は大きな影響力をもち、事実上日本の対ソ政策の根幹を形作ってきた。

しかし、ソ連政治に大きな変化が生まれ、ソ連(あるいはロシア)の脅威とは何かという肝心な点すらぼやけてきた今日、果たしてこれまでの政策を続けていくことは正しいのか、という問いかけをせざるを得なくなっている。しかし、外務省が自らその主張を改めることは期待薄だ。そこで、自民党内部から現状打開を主張する動きが生まれてきた。

戦前でも、外務省の政策、外交官の行動に対して、他の官庁から横やりが入ったことは稀ではない。特に、軍国主義が次第に日本の政治全体を覆うようになるにつれ、軍部が日本の対外政策に対して圧倒的な影響力をもち、外務省の力をそぐ結果になったことはよく知られている。

しかし、戦後における外務省と他官庁との関係は、格段に複雑になっている。しかも、日本外交の主な内容が経済問題になったことは、国内経済官庁との競合関係をいやが上にも増幅させてきた。外務省はこれまで、「外交のて几化」(外交問題は、外務省が国内を代表して対外的に折衝する唯一の政府機関であるという主張)を錦の御旗にして、他官庁が、その国内権限事項に関する外交問題を自前で処理することに対して徹底して抵抗してきた。

外務省の主張は、決して根拠のないものではない。外務省に限らず、どこの中央官庁にしても、その仕事の内容、権限、責任などの範囲に関しては、各々の「設置法」という法律があって、その中で定められている。外務省の場合、「外務省設置法」があって、その最初のところで、外交に関する事務は外務省が扱うとされているのである。