2015年3月3日火曜日

技術をオープンにして互いの成長を目指す

世界のボリュームゾーンに参入できるチャンスが目の前にあり、そのチャンスを最大限生かし、当社のインバータ技術を外に出すいわばオープン化戦略に打って出たのです。格力電器と組んで中国の国内標準を押さえることができればその先は世界標準へと続く近道だと判断しました。中国は2000年代後半ごろから、環境問題に対する取り組みを強化してきた。そのなかで中国の空調業界は中国メーカーが得意としてきたノンインバータで省エネ開発を加速するか、新たにインバータ技術に取り組むかの選択を迫られていた。ダイキンと格力電器との協業は中国市場に大きな変化をもたらした。中国の業界は一気にインバータに向かって動いたのである。格力との提携は日系企業が自らのコア技術を最大限許される範囲で提供し、中国市場とローカル企業の成長発展に寄与する点で非常に好意的に受け止められているようです。

政府・官公庁からも謝意を示され、官公庁とのパイプ毛太くなりました。我々は早くから中国政府や大手ローカルメーカーを中心にインバータ技術を推進するよう働きかけてきました。中国市場で最大のシェアを持つ格力が当社との提携によりインバータを選択したことは業界に大きな影響を与え、業界か一気にインバータに傾くことになりました。結果的に、デバイス市場でも、ノンインバータに集中していた部品がインバータにシフトするようになり、安くて品質の良い部品を確保できる効果も生まれました。

また、業界のハードルが当社が得意とする技術領域にまで高まったため、安価な商品は淘汰され、十分戦える価格レベルに引き上げられました。当社は「普及市場」「ボリュームゾーン」での拡販を加速させ、今までローカルメーカーの独檀場であった内陸部での拡大にも拍車をかけたのです。もし、当社がコア技術をオープンにしていなかったら、中国はノンインバータによる省エネを決めていたかもしれない。あるいは、当社が手をこまぬいている間に、ほかの同様の技術を持つ日系他社あるいは海外のメーカーと組んでインバータ化を進めていたかもしれません。当社が技術に対するこだわりを断ち切り、閉じられた自前主義を捨てて速やかに協業への舵を切ったことが良かったのだと思います。

インバータ技術を開示するにあたって、技術陣の意識を覆っていた『自前主義』から脱皮する必要があった。部品から製品までをグループ企業も含めて自前で製造、販売、管理する手法は日本企業の強さの源泉だったが、新興市場を開拓するときにはコスト競争を阻害する要因になっていた。新興国の購買力や嗜好に対応したコスト競争力のある製品・サービスをスピーディーかつ大量に供給できなければ、今後のグローバル競争で勝ち残ることはできません。これまで多くの日本企業が志向してきた垂直統合型の自前主義では限界があります。技術が成熟化し、主要な部品をどこからでも購入できる状況では、コア技術で他社に差をつける戦略も通用しにくくなっています。コスト競争力がカギを握る新興市場では水平分業体制の構築が不可欠です。

ただし、他社も同様な戦略をとってくるため、次に重要になるのが生産量の確保です。数がまとまれば、良い部品を安く買えるバーゲニングーパワーを発揮できるようになります。そこで、自前主義を捨て、技術のオープン化戦略に出たのです。技術のオープン化戦略の要諦は、市場全体が拡大することにあります。技術をオープンにすることで仲間を作る。技術そのものがいくらすぐれていても、技術をクローズにして仲間作りに失敗すれば独りよがりの技術として市場そのものが立ち上がらず、製品カテゴリーも消滅することが多い。そのことを日本企業は理解すべきです。