2014年7月1日火曜日

特定金銭信託

委託者がおカネを信託するときに、その運用を細かく定めるものをいいます。この場合信託会社は、信託の契約をするときにお客にいろいろ助言はするが、いったん信託を引き受けてしまえば、あとは委託者の指図した通りに運用するだけです。たとえば、Aという会社に金利は年七%で三年間おカネを貸すとか、Bという会社の株式を一株三百円で一万株買うといったように運用方法が決められているので、信託会社はその通りに運用しなくてはなりません。

そして銀行などの金融機関の金利は、法律や申し合わせによって大体一定していまナが、特定金銭信託はこの制限外になっていて、うまくいけばもうけも大きい代わりに、指図通りに運用して損しても、信託会社には責任がないことになっていますし、万一元金が返らない場合は、運用した形のままで(たとえば貸付金債権とか株式とか)、受益者に引き渡して信託を終了することも認められています。

したがって特定金銭信託の場合、信託財産の運用がうまくいくかどうかは、全く委託者がどんな指図をするかにかかっており、信託会社は助言をする程度で活躍する余地はほとんどありません。このため、特定金銭信託を利用しようとする人は、貸し出しとか株式投資についてかなりの知識と経験が要り、運用先ともある程度話し合いがっいていることが必要です。このような事情から、特定金銭信託を利用するのは、戦前からごく少数の人に限られていました。

ところが、昭和五十五年になって金銭の信託について法人税法基本通達で有価証券の簿価分離が認められたことから、各企業や金融機関が余資運用のために急速に特定金銭信託を利用し始めるようになりました。簿価分離とは、委託者がもともと持っている有価証券と、金銭の信託の中で持っている有価証券が同一銘柄であっても簿価を通算する必要はなく、委託者は金銭信託の受益権として会計処理すれば良いということです。

これによって、金銭の信託を使えば機動的な有価証券投資ができることとなり、運用能力のある生命保険会社や都市銀行などの機関投資家の問で有価証券投資を目的とする大口の特定金銭信託の利用が一気に進んだものです。これが新聞の証券欄で「株式特金」さらに略して「株特」といわれるものです。さらにこの特定金銭信託を応用したものとして、券面より安い価格で買った債券の償還差益を前倒しで会計処理し、毎年の利回りを上げるもの(アキュミュレーション)や、委託者が運用の指図権を投資顧問会社に委任するものなどもあります。